GPS連続観測システムは、国土交通省国土地理院が地殻変動の様相を日本全土で把握するとともに、GPSを利用した高精度測地網を全国域に構築することを目的として、既に運営されているGPS連続観測施設と全国GPS連続観測システムを統合し拡張する地殻変動監視の大規模なネットワーク・システムです。610ケ所の観測点(電子基準点)が設置された高密度のGPS固定連続観測網は測量業界や研究機関など広く注目を集めており、その成果に大きな期待が寄せられている測量技術といえるでしょう。
土地家屋調査士業界においては、一般の依頼者様には、その対象となる土地の情報として正確な「形状・辺長・面積」をご提供してまいりました。 しかし、今日では上記に加えて「対象の土地がこの地球上のどこに存在するか」までを数値情報としてご提供できるに至っています。(世界測地系で測量した場合)ここに一役買っているのが、最近土地家屋調査士の先生方の間でもすっかりよく耳にする言葉になりましたGPS測量です。GPS測量は、その目的により観測方法は複数あり、専門技術と知識・専用設備が必要となります。
GPS測量観測方法
人工衛星から送られてくる電波には、L1(1575.42MHz)と、L2(1227.6MHz)の2種類があります。このうちのL1のみを使用するのが1周波観測、L1/L2の両方を使用して観測するのが2周波となります。
測量手法 | 受信機 | 基線長 | 観測時間 | 公称制度 | |
---|---|---|---|---|---|
スタティック法 | 2周波 | 10km以上 | 1~3時間 | 5mm+1ppm×D | |
1周波 | 10km以内 | 60分 | 1cm+2ppm×D | ||
短縮スタティック法 | 高速スタティック法 | 2周波 | 5km以上 | 10~20分 | 2cm+2ppm×D |
1周波 | 20~30分 | ||||
疑似キネマティック法 | 1周波 | 5km以上 | 10分×2 | 2cm+2ppm×D | |
キネマティック法 | 1周波 | 1km以上 | 60秒 | 2cm+2ppm×D | |
RTK-GPS法(500km以内で利用) | 2周波 | 5km以上 | 10秒 | 2cm+2ppm×D | |
2周波 |
GPS測量関連の用語
GPS
- ①単独測位:1台の受信機で測定する方法で、10mの誤差で位置が決定できる。自動車や飛行機のナビなどに利用されている。
- ②相対測位:2台以上の受信機で2点間の相対的な位置関係を測定する方法で、リアルタイムではないが、100万分の1(2点間が10kmで1cmの誤差)の精度の測定が可能である。
- ③ディファレンシャルGPS、RTK-GPS測位:位置のわかっている基準局と、求めようとする観測点で同時に観測を行い、基準局で観測したデータを無線等で観測点に送信し、リアルタイムに位置を求められる。ディファレンシャルGPSは両点での単独測位で行い数m、RTK(Real Time Kinematicの略でリアルタイム測定)-GPSは両点で位相の観測を行い数cmの誤差で測定が可能である。
- ④リアルタイム測位システム:VRS(Virtual Reference Station 仮想基準点)方式、ネットワーク型RTK-GPSなどと呼ばれ、国土地理院が設置した全国約1000箇所の電子基準点と携帯電話等を使って基準点等を精度良く測定するシステムである。
Global Positioning Systemのイニシャルで、アメリカ合衆国が、航空機、船舶等の航法支援用として開発したシステムをいう。上空約2万kmに打ち上げられている24個の位置測定用の人工衛星から発信された電波が受信機に到達する時間によって位置を求めている。測定方法によって以下の四方法に分けられる。
日本測地系
世界測地系に対応した言葉で、最近まで測量法で定められていたわが国独自の位置及び高さの基準と地球の形に基づく緯度経度の基準をいう。最近のGPS測量など国際的に統一する動きの中で、測量法が平成13年6月改正され、世界の基準と整合を取るようになった。これに伴い、場所により若干異なるが、緯度経度の値がそれぞれ11秒(距離にしてそれぞれ450m程度で、同じ地点では東経の値では減少し、北緯の値では増加)変更となってなっている。
世界測地系
国際間で共通に用いる地球上の位置の座標系をいう。平成13年に改正された測量法でも、測量の基準は世界測地系で行うこととなり、そのための基準が定められている。
ジオイド
静止している海水面が地表にも続いていると仮定した面で、それぞれの地点での高さの基準となる面である。これは地球内部を構成している物質による重力で水面の高さが異なってくるからである。
電子基準点
国土地理院がGPSで常時観測している基準点で、全国に約1200点設置している。この点は、地殻変動の監視、各種測量の基準点として利用されており、2003年からはリアルタイムのデータの提供が行われるようになっている。